日本共産党柏原市会議員 橋本みつおのブログです。

子どもたちの学び、心身のケア、安全を保障するために――学校再開にあたっての日本共産党の緊急提言

子どもたちの学び、心身のケア、安全を保障するために――学校再開にあたっての日本共産党の緊急提言

2020年6月2日 日本共産党

ご意見などがございましたらお聞かせください。

 

緊急事態宣言が解除され、6月1日から全国の学校が3ヵ月ぶりに再開しました。長期の休校による子どもの学習の遅れと格差の拡大、不安とストレスはたいへんに深刻です。新型コロナ感染から子どもと教職員の健康と命をいかにして守っていくかは、重要な課題です。こうした問題を解決するための緊急の提言を行うものです。

学習の遅れと格差の拡大、心身のストレスは、手厚い教育、柔軟な教育を求めている

■学習の遅れと格差の拡大

学年の締めくくりと新たな学年のスタートの時期の3ヵ月もの休校は、子どもにはかりしれない影響をあたえています。

何より長期に授業がなかったことは、子どもの学習に相当の遅れと格差をもたらしました。学校は課題プリントの配布などで家庭学習を促すなど、さまざまな努力を行いましたが、まだ習っていない基本的な知識を、いろいろなやりとりのある授業なしで理解させるのは無理があります。保護者から「とても教えられない」と悲鳴があがったことは当然です。ネット教材に取り組んだ子どももいれば、勉強が手につかなかった子どももいます。長期の休校は、学力の格差を広げた点でも深刻です。

■かつてない不安とストレス

子どもたちは、かつてないような不安やストレスをためこんでいます。国立成育医療研究センターの「コロナ☓こどもアンケート」では、76%の子どもが「困りごと」として「お友だちに会えない」ことをあげ、「学校に行けない」(64%)、「外で遊べない」(51%)、「勉強が心配」(50%)と続いています。各種のアンケート調査には「イライラする」「夜眠れなくなった」「何もやる気がしない」「死にたい」などの子どもの痛切な声が記されています。また、コロナ禍による家庭の困窮は子どもにも様々な影響を与え、家庭内のストレスの高まりは児童虐待の増加などをもたらしています。

■子ども一人ひとりを大切にする手厚い教育が必要

こうした子どもを受け止める手厚い教育が必要です。

かつてない学習の遅れと格差に対しては、子ども一人ひとりに丁寧に教えることが欠かせません。学習が遅れた子どもへの個別の手立ても必要です。

子どもの本音を受け止め、かかえた不安やストレスに共感しながら、心身のケアを進めていくには、手間と時間が必要です。休校の中で特別な困難をかかえた子どもには、より立ち入った心理的、あるいは福祉的な面も含めた支援も求められます。

子どもたちの心身のケアをしっかりおこなうことは、学びを進めるうえでの前提になります。東日本大震災で深刻な被害にあった地域の学校は、子どもと教職員がつらい体験や思いを語り合うことで、学校生活がスタートできたといいます。新型コロナ危機という歴史的経験を語り考えることは、子どもたちの新たな出発点となるでしょう。

■子どもの実態から出発する柔軟な教育の必要性

例年通りの授業をしようと、土曜授業、夏休みや学校行事の大幅削減、七時間授業などで授業をつめこむやり方では、子どもたちに新たなストレスをもたらし、子どもの成長を歪め、学力格差をさらに広げることにもなりかねません。

子どもたちをゆったり受けとめながら、学びとともに、人間関係の形成、遊びや休息をバランスよく保障する、柔軟な教育が必要です。そうした柔軟な教育は、子どもを直接知っている学校現場の創意工夫を保障してこそ、実施することができます。

いま教員たちの間で、「まずは子どもを温かく迎えよう」「子どもに必要な行事も大切にしたい」「コロナ問題を教材にしたい」など多くの積極的なとりくみが生まれています。たとえばその中の「学習内容の精選」は重要な提案です。「学習内容の精選」とは、その学年での核となる学習事項を見定めて深く教え、それ以外は教科横断で学んだり、次年度以降に効率的に学ぶようにする方法です。そうしてこそ子どもに力がつき、逆に教科書全てを駆け足で消化するやり方では子どもは伸びないと多くの教員が指摘しています。こうした柔軟な教育が求められています。

学校の新型コロナウイルス感染症対策が、重大な矛盾に直面している

■「身体的距離の確保」と矛盾する「40人学級」

子どもの集う学校で万全の感染症対策をおこなう重要性は言うまでもありません。その学校で、感染防止の三つの基本(①身体的距離の確保②マスクの着用③手洗い)の一つである「身体的距離の確保」ができないという重大な問題に直面しています。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、「新しい生活様式」として、「身体的距離の確保」を呼びかけ、「人との間隔はできるだけ2メートル(最低1メートル)空けること」を基本としています。しかし「40人学級」では、2メートル空けることはおろか、1メートル空けることも不可能で、「身体的距離の確保」と大きく矛盾しています。

■「20人授業」が維持できず「40人学級」に戻ることへの不安

再開後の学校では20人程度の授業とするため、学級を2グループに分けるなどの「分散登校」に取り組んでいます。ところが、この措置はほとんどの学校で途中で終了し、5月25日まで緊急事態宣言が続いていた8都道府県でも大半の学校が6月15日から「40人学級」に戻る予定です。すでに6月1日から「40人学級」に戻っている学校もあります。学級を分けて20人程度の授業を続けるには、現在の教員数ではあまりに足りないため、各自治体は「40人学級」に戻らざるをえないのです。

「コロナ×子どもアンケート」の「子どもたちが相談したいこと」の1位は「コロナにかからない方法」です。「40人学級」に教職員も子どもも保護者も不安の声を上げています。「身体的距離の確保」を「新しい生活様式」の重要な一つとして社会全体で取り組んでいる時に、教室を例外とすることは重大な問題です。

■消毒や清掃などの新たな負担

さらに学校は感染症対策として、毎日の消毒、清掃、健康チェックなど今までにない多くの業務が生じています。次の感染拡大の波に備え、教員と各家庭とのオンラインの整備をすすめることも必要です。もともと異常な長時間労働で働いている教員にそれらの負担を課せば、教育活動への注力ができなくなり、その解決が求められています。

教員10万人増などの教育条件の抜本的整備、学習指導要領の弾力化を求める

以上の問題を解決するため、次の二つの政策の実施を強く求めます。

(1) 教員10万人増などの教育条件の抜本的整備

■20人程度の授業とするための教員10万人増

子どもへの手厚く柔軟な教育のためにも、感染症対策のためにも、学校の教職員やスタッフを思い切って増やし、20人程度の授業などができるようにすべきです。

政府も第二次補正予算案で教員増を盛り込みましたが、その規模は3100名とあまりに小さく、しかも高校は除外されています。3100名では、全国の小中学校の10校に1人しか教員が配置されず、焼け石に水です。

日本教育学会は潜在的な人材のプールを踏まえ、平均1校当たり小学校3人、中学校3人、高校2人の教員を加配する10万人の教員増を提案しています(「9月入学よりも、いま本当に必要な取り組みを―より質の高い教育をめざす改革へ―」5月25日)。

こうしたことを踏まえ、以下の条件整備を緊急にすすめることを求めます。

――小中高の教員を10万人増員し、後述の学習支援員とあわせて、20人程度の授業をできるようにします。そのため継続的雇用など処遇を手厚くするとともに、多くの教職経験者から教員免許を奪っている教員免許更新制を凍結します。教室の確保のため、プレハブ建設や公共施設の利用をすすめます。私立学校にも私学助成を増額し、同様の措置をとります。

――養護教諭をはじめとする教職員を増やします。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、学習や清掃・消毒・オンライン整備などのための支援員を第二次補正予算案の8万人余から十数万人に増員します。感染症対策の備品と設備は政府が責任をもって保障するようにします。

――特別支援学校は、もともと設置基準がないもとで深刻な「密」となっています。プレハブ建設などによる場所の確保と教職員などの増員を早急に行います。

■10万人の増員を少人数学級への移行のステップに

10万人の教員増は、日本の学校が少人数学級に移行するうえでのしっかりした土台となります。現在の困難を乗り越えたあと、子どもたちに少人数学級をプレゼントしようではありませんか。

(2)子どもの実態に応じた柔軟な教育のために、学習指導要領の弾力化を

子どもの実態に応じた柔軟な教育活動のためには、学習指導要領などによる管理統制を弾力化し、現場の創意工夫を引き出すことが不可欠です。

この間の政府の通知の中に、「児童生徒の負担が過重とならないように配慮する」「学習指導要領において指導する学年が規定されている内容を含め、次学年又は次々学年に移して教育課程を編成する」「学習活動の重点化」など、学習指導要領の弾力化につながる要素があることは一定評価できます。しかし、国の通知には夏休み削減や土曜授業を求めるなどの問題点もあります。

学習の遅れと格差、大きな不安とストレスという子どもの実態から出発した、学校現場の創意工夫と自主性を保障する、学習指導要領の弾力化にふみこむよう求めます。

憲法の精神は、教育の本質から、教員の一定の自主性を認め、教育内容への国家的介入の抑制を求めています(最高裁学力テスト判決)。ここから、学習指導要領でも教育課程の編成権は個々の学校にあることが明記されました。行政に忖度せず、目の前の子どもたちのために何がいいか話し合って決めていく学校現場を育てることは、現在の厳しい状況を打開するだけでなく、未来の希望ある学校をつくるために大きな力となります。

■「学校9月入学」を断念し、子どもたちの学び、心身のケア、安全の保障のために全力を集中することを求める

安倍首相が検討を指示した「学校9月入学」は、検討すればするほど、多くの社会制度変更が必要となり、国民各層に多大な負担がかかることが明らかになっています。政府は「学校9月入学」を一刻も早く断念し、子どもたちの学び、心身のケア、安全の保障のために全力を集中することを求めます。

 

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