日本共産党柏原市会議員 橋本みつおのブログです。

質問日は26日(火)10時からです

20日(水)は、リサイクルの日。

早起きをしたので、ブログを3度更新しました。

 

登校見守り挨拶活動。

風が吹き、寒さを感じました。

8時30分までやっくんを待ちましたが来なかったので、ひょっ君(以前から私が少し気にかけていた子)と登校しました。

校門で先生に「○○君、きませんでした」と告げると「もう登校しました」と言われました。

いつの間に登校したのか、謎です。

 

市役所へ。

江村議員と会議をしました。

代表質問と江村議員が担当する総務産業委員会の進行状況を確認しました。

 

午後からは、大県事務所へ。

胡蝶蘭もこんな感じになってきました。

小松ひさし候補者カーの先導を行いました。

 

元気よく日本共産党の政策を訴えられました。

4時からは、河原府営住宅で証紙ビラ配布作戦を行いました。

多くの皆さんが集まり、400枚を配布出来ました。

 

皆さんのお宅のポストにお届けします。

 

追記。

帰宅後は、日本共産党大阪府委員会の活動者会議の録画を視聴しました。

日本共産党柏原市会議員団を代表し、橋本みつおが代表質問わ行います。

10月26日(火)の午前10時から11時20分です。

 

傍聴席は40席あります。

是非とも、傍聴にお越しください。

 

 

気候危機を打開する日本共産党の2030戦略

目次


1、気候危機とよぶべき非常事態――CO₂ 削減への思い切った緊急行動が求められている

(1)2030年までのCO₂ 削減に人類の未来がかかっている

気候危機とよぶべき非常事態が起こっています。すでに世界各地で、異常な豪雨、台風、猛暑、森林火災、干ばつ、海面上昇などが大問題になっています。

国連IPCC「1.5度特別報告書」は、2030年までに大気中への温室効果ガス(その大半はCO₂ )の排出を2010年比で45%削減し、2050年までに実質ゼロを達成できないと、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比して1.5度までに抑え込むことができないことを、明らかにしました。

たとえ気温上昇を1.5度に抑えても、洪水のリスクにさらされる人口は今の2倍となり、食料生産も減少するなど人類と地球環境は打撃を受けますが、それを上回る気温上昇となると、その打撃は甚大なものとなります。

2度上昇すれば、洪水のリスクにさらされる人口は2.7倍に増加し、サンゴの生息域は99%減少してしまいます。さらに、大気中の温室効果ガスが一定濃度をこえてしまうと「後戻り」できなくなり、3~4度も上昇してしまうと気候変動による影響が連鎖して、悪化を止められないという破局的な事態に陥ってしまいます。

パリ協定は、それを避けるために「上昇幅を2度を十分に下回り、1.5度以内に抑える」ことを目的として日本を含む世界196か国が合意して、締結したのです。

IPCCは、今年8月、新たな報告書を発表し、「人間の影響が温暖化させてきたことにはもはや疑う余地はない」としました。同時に、これからの10年の思い切った削減と、2050年までに温室効果ガスの排出量の「実質ゼロ」を達成し、その後も大気中のCO₂ の濃度を下げる努力を続けることによって、21世紀の最後の20年には1.4度まで抑えることができることも示しました。

新型コロナウイルス、エボラ出血熱、エイズなどの新しい感染症が次々と出現し、人類社会の大きな脅威となっていますが、この背景にも、森林破壊をはじめとした環境破壊、地球温暖化があります。

すでに世界の平均気温は1.1~1.2度上昇しており、破局的な気候変動を回避するために取り組める時間は長くありません。10年足らずの間に、全世界のCO₂ 排出を半分近くまで削減できるかどうか、ここに人類の未来がかかっているのです。

(2)日本でも気候危機の深刻な影響があらわれている

気候変動による脅威と被害は、日本でも、「経験したことがない」豪雨や暴風、猛暑など、きわめて深刻です。今年の夏も、大雨特別警報や「緊急安全確保」の指示が頻繁に出され、洪水・土石流が起こり、多数の死者や行方不明者、大きな被害がもたらされています。豪雨水害では最大の被害額(1兆1,580億円)となった2018年の西日本豪雨、千曲川や阿武隈川の堤防が決壊した2019年の台風19号、球磨川水系での大洪水が起きた2020年の熊本豪雨など、「何十年に一度」とされる豪雨災害が毎年発生しています。

猛暑も頻繁に起きるようになり、2018年の夏の猛暑は、各地で40℃をこえ、5月から9月までの間の熱中症による救急搬送人数は9万5,137人と過去最多となりました。

海水温の上昇や海流の変化は、異常気象の原因となるとともに、海の生態系に悪影響を及ぼし、漁業への打撃ともなっています。

日本は、西日本豪雨や猛暑、台風21号などがあった2018年に、気候変動の被害を受けやすい国ランキングで世界1位となり、翌19年も台風19号の被害などで第4位となりました(ドイツの環境シンクタンク「ジャーマンウォッチ」)。

気候危機は、日本に住む私たちにとっても、緊急に解決しなければならない死活的な大問題となっているのです。

2、「口先だけ」の自公政権――4つの問題点

自公政権は、やっと昨年「2050年カーボンゼロ」をかかげましたが、中身を見れば、「口先だけ」というほかないものです。そこには4つの問題点があります。

(1)2030年までの削減目標が低すぎる

第一は、一番肝心な2030年までの削減目標が低すぎるということです。

政府が、4月に発表した2030年度の削減目標は「2013年度比で46%削減」です。これは2010年比にすると42%減であり、国連が示した「2030年までに2010年比45%減」という全世界平均よりも低い、恥ずかしいものです。

世界の先進国は、2030年までにEUは55%減(1990年比)、イギリスは68%以上減(同。35年には78%減)、バイデン政権のもとパリ協定に復帰したアメリカは50~52%減(2005年比)など、最低でも50%以上、60%台の削減目標を掲げています。

先進国には、産業革命以来、CO₂ を長期に排出してきた大きな責任があります。また、高い技術力と経済力も持っています。日本には世界平均以上の目標でCO₂ 削減をすすめる責任があります。

(2)石炭火力の新増設と輸出を進めている

第二は、この期におよんで石炭火力に固執し新増設と輸出を進めていることです。

国連は、石炭火力からの計画的な撤退を強く要請し、グテレス事務総長は、日本など「最も豊かな国々」に同発電の2030年までの段階的な廃止を求めています。

ところが自公政権は、7月21日に発表した「第6次エネルギー基本計画(素案)」で、2030年度の発電量に占める石炭火力の割合を26%から19%にするとしたのみで、石炭火力からの撤退を表明しません。すでに、イギリス―2024年、フランス―2022年、イタリア―2025年、ドイツ―2038年、カナダ―2030年など、多くの国々が石炭火力からの撤退年限を表明し、アメリカは2035年までに「電力部門のCO₂ 排出実質ゼロ」を表明しています。

それどころか、自公政権は、国内で9件の大規模な石炭火力の建設をすすめ、インドネシア、バングラディシュ、ベトナムへの石炭火力輸出も推進しています。これでは30年、50年先まで、CO₂ を大量に排出し続けることになります。

石炭火力の新規建設・計画、輸出を中止し、既存の石炭火力についても、2030年を目途に計画的に廃止するエネルギー政策に転換することは、脱炭素に真面目に取り組むかどうかの試金石です。

(3)原発依存――最悪の環境破壊と将来性のない電源を選択する二重の誤り

第三は、「脱炭素」を口実に、原発だのみのエネルギー政策を加速させようとしていることです。

「エネルギー基本計画(素案)」では、2030年度に、原発で発電量の20~22%をまかなうとしています。現在の原発による発電量は全体の6%程度ですから、老朽炉を含む27基程度の原発を再稼働しようというのです。

原発は、放射能汚染という最悪の環境破壊を引き起こします。事故が起きなくても使用済み核燃料が増え続け、数万年先まで環境を脅かし続けます。最悪の環境破壊を引き起こす原発を「環境のため」といって推進するほど無責任な政治はありません。

しかも、原発に固執するエネルギー政策は、危険な「老朽原発の延命」をしても、近い将来の新増設が必須となります。しかし、福島原発事故を経験し、国民多数が原発ゼロを望んでいる日本で、どこに新しい原発をつくれるところがあるでしょうか。原発の新増設を前提としたエネルギー政策は、電力供給の面でも破たんする無責任な政策です。

(4)実用化のメドも立っていない「新技術」を前提にする無責任

第四は、実用化のメドも立っていない「新技術」を前提にしていることです。新技術の開発は必要ですが、それを前提にすればCO₂ 削減の先送りになるだけです。

政府は、石炭火力の継続・建設を前提に、火力で排出されるCO₂ を回収し地下に貯留する技術(CCS)や、火力の燃料にアンモニアを混ぜたり、アンモニア単独で燃やす技術、水素の利用技術などを今後開発して、CO₂ の排出を減らすとしています。しかし、これらはどれも実現するかどうか定かではないものばかりです。

たとえばCO₂ を回収できたとしても、国内には地下に安定的に貯留できる適地はありませんし、コストも高額になります。アンモニアを混ぜても、火力発電で化石燃料が多く消費されることに変わりありません。水素の生成には、大量の電力を必要としますが、その電力を化石燃料でつくったら何もなりません。再生可能エネルギーを使った電力で水素を生成したとしても、エネルギーロスが生まれ、そのまま電力として利用した方が効率的です。再生可能エネルギーに余裕ができる「将来の話」なら別ですが、2030年までという期間では非現実的です。

研究者グループからは“既存の省エネ・再エネの技術だけでも93%削減できる”という提言もあります(未来のためのエネルギー転換研究グループ)。

2030年までに緊急にCO₂ の大幅な削減が求められている状況では、既存の技術や、実用化のめどが立っている技術を積極的に普及・導入することで、直ちに削減に踏み出すことが必要です。

3、日本共産党の提案――省エネと再エネで、30年度までに50~60%削減

(1)2030年度までにCO₂ を50%~60%削減する

脱炭素社会に向けて、多くの環境団体・シンクタンクが、2030年までの目標と計画を示しています(下表)。これらは温暖化防止のNGO・NPOや研究者中心のグループ、大企業や産業界、地方自治体などが参加する団体やシンクタンクです。政治的、経済的な立場の違いはあっても、エネルギー消費を20~40%減らし、再生可能エネルギーで電力の40~50%程度をまかなえば、CO₂ を50~60%程度削減できる、という点で共通しています。

 日本共産党は、2030年度までに、CO₂ を50~60%削減する(2010年度比)ことを目標とするよう提案します。それを省エネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせて実行します。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば、50~60%の削減は可能です。さらに2050年に向けて、残されたガス火力なども再生可能エネルギーに置き換え、実質ゼロを実現します。

 

各団体が提起している2030年度の目標

削減率
%減
基準年 最終エネルギー
消費削減 %
電力消費
削減 %
再エネ電力
原子力
石炭火力
気候ネットワーク 65 2013年度 CO₂ 40 (2013年度比) 20  (同左) 50以上 0 0
未来のためのエネルギー転換研究グループ 55 1990年 CO₂ 38 (2013年度比) 28 (同左) 44 0 0
自然保護基金(WWF)ジャパン 51 2013年度 CO₂ 22 (2015年度比) 15 (同左) 50 2 0
自然エネルギー財団 47 2013年度 CO₂ 30 (2013年度比) 14 (2015年度比) 45 0 0
ジャパン・クライメイト・イニシアチブ(JCI) 50 2013年度 GHG 40~50
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP) 50以上 2013年度 GHG 50以上

(注) *GHGは温室効果ガス(Greenhouse Gas)で、CO₂ が大部分を占め、他にメタンやフロン、一酸化二窒素、六フッ化硫黄などを含む。
●気候ネットワークは、地球温暖化防止のために市民の立場から提案・発信・行動するNGO・NPO。
●未来のためのエネルギー転換研究グループは、日本におけるエネルギー・ミックスや温暖化問題を専門とする研究者を中心とするグループ。
●WWFは人類が自然と調和して生きられる未来を目指し、約100カ国で活動する環境団体。WWF ジャパンは、日本国内および日本が関係する問題に取り組む。
●自然エネルギー財団は、ソフトバンクグループの孫正義代表が2011年に設立し、現在も財団の会長を務める公益財団法人のシンクタンク。
●JCIは、パリ協定が求める脱炭素社会の実現に向け取り組む団体。486企業、141のNGO・団体、37の都府県市区の、合計664団体の連名で2030年度の野心的な削減目標を国に求めている。
●JCLPは、脱炭素化社会に産業界が行動を開始すべきだとして2009年に発足した企業団体で、197社が加盟。

(2)大規模な省エネを進める条件は大いにある

エネルギー消費を減らす省エネルギーは、CO₂ 排出を減らすうえで決定的です。日本は、省エネという面でも世界から大きく立ち遅れており、大規模な省エネを進める条件は大いにあります。GDP当たり一次エネルギー消費量の変化割合(1990-2021年)

GDP当たり一次エネルギー消費量の変化割合
出典:IEAのEnergy Prices and Taxes Statistics などから作成(明日香壽川著『グリーン・ニューディール』)

 

日本は、GDP当たりのエネルギー消費量でみて、1970年代のオイルショックを経て80年代までは、「世界の先進」と言える取り組みをしてきましたが、バブル崩壊後は消費量が増え、その後も停滞し、はっきりと減り始めたのは東電福島第一原発事故後です。この大きな立ち遅れは、逆に言えば、日本で省エネにまともに取り組めば、CO₂ 排出を大きく削減できる可能性があることを示しています。

実際に、ガス火力発電の平均エネルギー効率は40%程度で、残りの6割は排熱として捨てられていますが、エネルギー効率を8割程度まで引き上げる実例も生まれています。製鉄でも、古鉄を原料に電気で精製する電炉方式は、鉄鉱石から精製する高炉方式より消費エネルギーを3割削減できるところまできています。製造業でも、断熱化や電力利用の効率化などによる省エネ投資でエネルギー消費量を2~3割減らしたり、製造過程で出ていた排熱を利用するシステム導入でエネルギー消費量を6~8割削減することも可能になっています。

省エネは、企業でも家庭でも、多くは3~4年で、建物など耐用年数の長いものでも10年で投資した省エネ費用の回収ができ、その後はエネルギー消費減による節約効果が続きます。省エネは、「がまん」や「重荷」ではなく、企業にとっては、コスト削減のための投資であり、家計にとっても負担減になるのです。

(3)再生可能エネルギーの潜在量は電力需要の5倍――大きな可能性と必要性

再生可能エネルギーの可能性もきわめて大きなものがあります。

政府の試算でも、日本における再生可能エネルギーの潜在量は、現在の国内の電力需要の5倍です。再生可能エネルギーによる電力を、2030年までに50%(現状の2.5倍)、2050年までに100%にすることは十分可能です。

日本の発電量における再生可能エネルギーの比率は22%(2020年)です。ドイツ48%、スペイン44%、イギリス43%、カリフォルニア州53%(2019年)などと比較しても大きく立ち遅れており、中国29%にも抜かれました。2030年に向けた目標でも、スペイン74%、ドイツ65%、EU全体で57%、アメリカのカリフォルニア州60%、ニューヨーク州70%となっていますが、日本は36~38%です。

再生可能エネルギーの導入が進むほど価格は下がっており、新設の発電コストを電源別に比較すると、いまでは太陽光発電が最も安く、風力がそれに次いでいます。一方、石炭火力は太陽光の3倍、原発は4倍ものコストがかかります。その潜在的可能性をくみつくす再生エネルギーへの大転換の戦略をもつことは急務です。

世界では、グローバル企業を中心に、自社製品やサービスの提供をはじめ事業の100%を再生可能エネルギーで行うという「RE100」の運動が広がっています。日本における再生可能エネルギーの本格導入が遅れ、石炭火力や原子力でつくった電力を使わざるを得なくなれば、日本企業は世界市場で競うことも、製品を輸出することも、できなくなってしまいます。この面からも再生エネルギーへの大転換は急務となっています。

4、脱炭素、省エネ・再エネをすすめる社会システムの大改革を

電力と一部産業、大規模事業所の脱炭素化が、決定的に重要

脱炭素、省エネ・再エネを大規模にすすめるためには、電力、産業、運輸、都市、住宅など、社会のあらゆる分野での大改革が必要です。

とくに日本におけるCO₂ の排出量は、発電所(エネルギー転換)で39%、産業で25%、全体の6割以上を占めています。

CO₂ 排出量は、電力事業と、鉄鋼(12%)、セメント(2%)、石油精製(2%)、化学工業(1%)、製紙業(0.2%)の6つの業種に集中しています。また、85の事業所でCO₂ 排出量の半分、200の事業所で60%を占めます。

つまりCO₂ 排出の大所は限られています。電力会社と一部の産業、200程度の大規模事業所での脱炭素化は、日本全体でのCO₂ 削減をすすめるうえで決定的に重要です。

 

CO₂ の排出量の分野別割合(2019年度)

 

(1)電力分野――電力消費の削減、再エネの両面で大改革を

電力分野は、日本全体のCO₂ 排出量の約4割を発電が占めるもとで、CO₂ 削減の成否を握っています。

次の電力大改革を進めます。

①社会全体の省エネルギー化によって、2030年までに電力消費を20~30%削減する。

②2030年に、石炭火力、原発の発電量はゼロとする。

③化石燃料から再生可能エネルギーへの大転換を進め、2030年に、電力の50%を再生可能エネルギーでまかなう。

■再生可能エネルギー電力の優先利用原則を確立し、送電網・供給体制を整備する

再生可能エネルギーの普及をすすめるうえで、全国各地につくられる小規模な再生可能エネルギー発電を有効かつ大規模に活用する体制を作ることが必要です。

何よりも、再生可能エネルギーで発電した電力を優先的に利用する、優先利用原則を確立することです。自公政権も口では「再生可能エネルギーの主力化」と言っていますが、実態は、発電量が過剰になると、まず太陽光や風力での発電が電力系統から外され、原発や石炭火力での発電が最優先になっています。

同時に、再生可能エネルギーで発電した電力を最大限活用できる送電網などのインフラ整備が必要です。電気は、瞬時に、石油・ガソリンのような輸送コストもなく全国に送ることができます。再生可能エネルギーはどこにでも存在しますが、自然条件の違いで特に有利な地域もあり、その条件を生かして大都市部へ送電することで、地域の活性化に役立てることもできます。

――EUでは、再生可能エネルギー電力の優先接続が義務化されており、日本でも、優先利用を義務化します。

――発送電の分離をすすめ、大電力会社の市場支配力が強大なままという現状を是正し、地域で開発した再生可能エネルギーを有効に活用できるようにします。

――発電所から送電網への接続線が小規模な再生可能エネルギー発電事業者の負担になっている現状を改め、接続線を大手の送電事業者の責任で設置させます。

――再生可能電力を全国で融通できるように、必要な送電網の整備をすすめます。9電力に区切られた送配電体制を東西2つの体制にするなど、送配電体制の整備・統合をすすめます。

■再エネは地域のエネルギー――地域と住民の力に依拠した開発を

再生可能エネルギーは、密度は低いものの、日本中どの地域でも存在します。再生可能エネルギーは、この特徴に即して、地域と住民の力に依拠して活用をすすめてこそ、大規模な普及が可能になります。そうすれば地域おこしにとっても貴重な資源となります。地域のエネルギーとして、地域が主体になって開発・運営し、その事業に資金を供給する取り組みを推進する必要があります。

――自治体のイニシアチブも発揮して、住民の合意と協力、地域の力に依拠し、利益が地域に還元され、環境破壊を起こさない再生可能エネルギーの利用をはかります。

――住宅や小規模工場の屋根への太陽光パネルの設置、自治体主導や住民の共同による事業、屋根貸し太陽光発電事業などを推進します。そのために、再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度を地域の多様な取り組みを促進するように改善します。

■再エネ導入の最大の障害=乱開発をなくすための規制を

再生可能エネルギーの普及の大きな障害になっているのが、メガソーラーや大型風力発電のための乱開発が、森林破壊や土砂崩れ、住環境の悪化や健康被害の危険を広げていることです。目先の利益追求での乱開発・環境破壊を放置するなら、再生可能エネルギーへの大胆な転換を阻害し、気候危機も打開できなくなってしまいます。

二つの方向での解決が必要です。

①環境を守る規制を強化し、乱開発をなくす。

森林法などの現行法は、森林を伐採してメガソーラー発電所をつくるなどの事態を想定していません。環境保全のための森林法改正、土砂崩れの危険性も評価事項に加えるなどアセスメントの改善が必要です。発電開始後も点検を行い、環境破壊や人体への悪影響がある場合には必要な是正措置をとらせます。

環境保全地区と建設可能地区を明確にしたゾーニングを、自治体が住民の参加・合意のもとで行うことも必要です。域外・外国の資本による乱開発を防止することは、利益の地域外への流出を防ぎ、地域のエネルギーであり資源である再生可能エネルギーを、地域の産業として開発し、地域の雇用や需要の創出につなげることにもなります。

②「新たな開発」ではなく、既存の施設・建築物・未利用地などの活用を推進する。

工場の屋根に太陽光パネルを設置して、エネルギー転換とコスト削減を実現した企業も生まれています。欧州では、ほとんどの住宅や建築物に太陽光パネルが設置されている町も多くあります。固定価格買取制度の改善をはじめ、開発の必要がない再生可能エネルギー導入を推進することが必要です。

■日本の条件にあった再エネ技術の開発を進める

世界が再生可能エネルギー導入に本格的に動き出していた2003年に、政府は、風力発電の国の研究を「技術が成熟したので不要になった」として打ち切りました。メーカーも開発を中断し、日本の風力発電は輸入に頼らざるを得なくなっています。日本は温帯モンスーン気候のもとで、風の強さや風向きが急激に変わるという特質があり、落雷も多いので、その条件にあった風力発電が必要です。日本の条件に合った再生可能エネルギーの技術開発を国が率先してすすめます。

(2)産業分野――省エネと脱化石燃料の社会的責任を果たす規制と支援を

■CO₂ 削減目標を業界・企業の「自主目標」まかせでなく、国との「協定」にして国民への公約にします。

産業分野でのCO₂ 排出は電力分野に次いで大きな比重を占めています。しかし、産業分野でのCO₂ 削減の目標と計画は、業界や企業の「自主目標」という“企業まかせ”にとどまっています。イギリスなどでは削減目標や計画を政府と企業の「協定」として公表しています。政府とCO₂ 排出量が多い企業が「協定」を結ぶことは、産業分野でのCO₂ 削減に政府も責任を負うとともに、国民への公約になります。

――CO₂ 排出量が大きい6つの業界、200程度の大規模事業所に、CO₂ 削減目標と計画、実施状況の公表などを「協定」として政府と締結することを義務化します。未達成の場合には課徴金を課します。

――その他の企業には規制ではなく、第三者の認定機関が各企業の目標と計画、進捗状況を評価する制度をつくり、CO₂ 削減の取り組みが正当に評価されるようにします。

■中小企業の「省エネ投資」を支援します。

中小企業にとっても、脱炭素の取り組みは光熱費・燃料費削減などのコスト面だけでなく、売上げの拡大、融資獲得といった事業の成長につながります。

――中小企業、農林漁業を対象に、「省エネ投資」のための無利子・無担保・無保証の融資制度を創設します。

――2兆円の「グリーンイノベーション基金」を大企業だけでなく、中小企業、農林漁業でも活用できるようにする、CO₂ 削減計画を持った中小・零細企業が利用しやすい「グリーン減税」を創設するなど、税財政による支援を強化します。

■脱炭素と結びついた農業・林業の振興

地球規模での食料難とともに、「農業による環境破壊」や森林破壊が大きな問題になっており、食料や木材の自給率向上は国際的な責任です。耕作農地の減少を食い止め、CO2貯留量を増やす農地を確保することも大切です。所得補償、価格保障、国内材の活用など農業、林業の基本的な振興策とともに、脱炭素・環境保全型の農林業を振興します。

――農山漁村での再生可能エネルギーの活用を推進します。ハウスなどの農業施設での化石燃料ゼロ、木材・バイオマス素材への転換など、生産プロセスの脱炭素化への取り組みを支援します。

――農地でのソーラーシェアリングや耕作放棄地での太陽光発電をすすめます。

――小規模バイオマス発電の普及のために、収益性が上がる買い取り価格の設定や、小規模木質発電に適する山村地域への送電線整備などをすすめます。

(3)運輸・交通分野――交通政策の全面的転換、自動車からのCO₂ 排出を削減・ゼロに

■交通政策を脱炭素の観点から全面的に転換する

脱炭素や環境優先の交通政策に転換し、鉄道、路線バスなどの公共交通を重視します。40年前の国鉄民営化から続いている「民間まかせ、市場まかせ」の鉄道政策を見直し、鉄道の公共性、脱炭素社会への重要な役割にふさわしく国が公的に支えることが求められています。

――全国鉄道網を維持・強化し、脱炭素化をすすめるための公共交通基金を創設し、不採算地域での鉄道事業の赤字を適切に補てんしたり、車両・設備の省エネ化を支援します。基金の財源は、ガソリン税をはじめ自動車関連税、航空関連税などの交通関係の税の一部や、JR東日本、東海、西日本などの巨額利益の一部も組み入れます。

――新幹線の4倍もの電力を消費する、リニア中央新幹線の建設は中止します。

■電気自動車などを普及し、2050年までに自動車からのCO₂ 排出をゼロにする

多くの自動車は十数年で買い替えられます。いまから年限を定めて切り替えをすすめれば、2050年までに自動車からのCO₂ 排出をゼロにできます。

――新車販売を2030年までに、ガソリン車から電気自動車(EV)などゼロエミッション車(ZEV)に全面的に切り替えます。大型トラックなどのディーゼル車も早期の切り替えをすすめます。その際、自動車メーカーに下請け・関連企業にたいする社会的責任を果たさせます。

――公共交通機関と組み合わせた自転車利用など自転車利用環境を整えます。

(4)都市・住宅――断熱・省エネのまちづくりを進める

都市・住宅の断熱・省エネ化を、新築・改築時に進めることが必要です。また、都市の再開発や大型開発事業にあたっては、CO2排出量を削減するという視点から計画を見直します。

――新築・改築時の省エネ・再生エネ化を規制と助成一体にすすめます。一定規模の建物建設に断熱化、太陽光パネル設置などの脱炭素化対策を義務化するとともに、住宅建設への省エネ減税・住宅ローン減税の上乗せなどを行います。

――官公庁、学校など公共建築で、太陽光パネルで消費エネルギーがまかなえる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」を実現するなど、公共施設から脱炭素をすすめます。

――ゴミの焼却熱、事業所のボイラー熱、バイオマス発電の排熱をはじめ、未利用熱・地中熱等を病院、オフィス、住宅などの熱エネルギー源として利用をはかります。

――公共事業でライフサイクル・アセスメントを実施して、調達、建築、運用、メンテナンスにいたる全過程でCO₂ 排出量を公開します。環境破壊の無秩序な都市再開発をやめ、自然の空気の流れや日差しを有効利用する都市計画をすすめます。

(5)自治体――ゼロエミッションをすすめる

「2050年CO₂ 排出ゼロ」を表明した自治体は40都道府県、268市、10特別区、126町村(8月31日現在)にのぼりますが、その取り組みは緒に就いたばかりです。すべての地方自治体が2030年までの地球温暖化対策推進計画を策定し、住民とともに実践の先頭に立つよう、責任を持った取り組みを加速することが求められています。また、地域に還元され、貢献する再生可能エネルギー活用をすすめるために、自治体が役割を発揮することが求められています。

――公共施設、公共事業、自治体業務でどれだけCO₂ を削減できるかなど、地方自治体自らの脱炭素化に向けた「目標と計画」と、区域内の脱炭素化の「目標と計画」という両面での「目標と計画」を策定します。その実現のために、地元企業と独自の協定や、省エネ投資への自治体独自の支援、断熱・省エネルギー住宅へのリフォーム、太陽光発電用パネルの設置などへの助成を行います。

――住民参加のもとで、自治体がゾーニングを行い、地域の環境と両立した形で再生可能エネルギーが導入「できる」場所と「できない」場所を “可視化”します。

――各自治体に、太陽光など再生可能エネルギーによる電力の利用、税金の優遇、補助金の申請、脱炭素に有効な製品・サービスの選択など、住民や地元企業に専門的なアドバイスを行える支援窓口を、環境省、都道府県との連携を強化しながら、設置します。

5、脱炭素と貧困・格差是正を二本柱にした経済・社会改革で、持続可能な成長を

(1)脱炭素社会の実現は、「耐乏」でも「停滞」でもなく、持続可能な成長に道を開く

脱炭素化、省エネルギーと再生可能エネルギーの推進は、生活水準の悪化や耐乏生活を強いるものでも、経済の悪化や停滞をもたらすものでもありません。それどころか、新しい雇用を創出し、地域経済を活性化し、新たな技術の開発など持続可能な成長の大きな可能性を持っています。

省エネは、企業にとっても中長期的な投資によってコスト削減とまともな効率化をもたらします。リストラ・人件費削減という経済全体にマイナスとなる「効率化」とは正反対です。住宅などの断熱化は、地域の建設業などに仕事と雇用を生みだします。
再生可能エネルギーのための地域の発電所は、石炭火力や原発などより、はるかに多い雇用を生み出し、地域経済の活性化につながります。海外に依存してきた化石燃料への支払いは大幅に減り、日本経済の弱点である低いエネルギー自給率は大きく向上し、再エネの普及によるコスト削減もあり、電気料金の値下げにもつながります。

ある研究グループの試算では、2030年までに、エネルギー需要を約40%削減する省エネと、再生可能エネルギーで電力の44%をまかなうエネルギー転換を実施すれば、年間254万人の雇用が新たに創出され、エネルギー転換で影響を受ける産業分野での現在の雇用者20万人をはるかに上回ります。投資額は、2030年までの累計で202兆円となり、GDPを205兆円押し上げ、化石燃料の輸入削減額は52兆円になるとされています(未来のためのエネルギー転換研究グループ 「レポート2030」)。

国際エネルギー機関(IEA)は、クリーンなエネルギーシステム構築、クリーンな交通システム、産業部門の省エネなど、持続可能性を重視した施策に3年間で3兆ドルを投じれば、世界のGDP成長率を、年平均で1.1%ポイント増加させると予測しています(「持続可能なリカバリー(経済復興)」2020年6月)。

脱炭素社会の実現は、「耐乏」でも「停滞」でもなく、持続可能な成長に道を開くものなのです。

(2)コロナからの復興はグリーン・リカバリー(緑の復興)で

経済成長と脱炭素化を同時にすすめるという認識は世界に広がり、コロナで落ち込んだ経済を立て直すにあたって、グリーン・リカバリー(緑の復興)が世界的規模での大きな課題になっています。

EUは、新型コロナからの復興予算の30%を気候変動対策などのグリーン・リカバリーに投じるとして、7年間で140兆円に上る長期予算案と約95兆円の経済復興策を打ち出し、再生可能エネルギーの普及や電気自動車への転換のための巨額のインフラ支援などが盛り込まれました。

フランス政府は、経営難に陥ったエールフランスに資金を融資するにあたって、列車など代替手段がある2時間半以内の国内路線を縮小することを条件にするなど、脱炭素化を促す方向性が明確になっています。

しかし、日本政府はこのような考え方を対策の基本に位置づけていません。本気で2050年にCO₂ 排出実質ゼロをめざすなら、“コロナ前”に戻る従来型の「経済対策」ではなく、省エネ・再エネの推進を軸にしたグリーン・リカバリーこそすすむべき道です。

(3)気候危機の打開は、貧困と格差をただすことと一体のもの

気候危機打開の取り組みをすすめるためには、財界いいなりの政治を変え、石炭火力利益共同体、原発利益共同体の抵抗を排除しなければなりません。

とりわけ、1990年代から顕著になった新自由主義の政治の根本的な切り替えが必要です。大企業の目先の利益拡大と株主利益の最大化をめざす新自由主義によって、企業は省エネや再生可能エネルギーのような中長期的な投資より、短期の利益確保に追われ、金融投機やリストラによるコスト削減にはしりました。

気候危機の打開は、貧困と格差をただすことと一体のものです。どちらも根っこにあるのは、目先の利益さえあがればよい、後は野となれ山となれの新自由主義の政治であり、その転換こそが求められています。

脱炭素化は、大きな社会経済システムの転換、「システムの移行」を必要とする大改革です。再生可能エネルギーは、将来性豊かな産業であり、地域経済の活性化にもつながる大きな可能性をもっていますが、そこでの雇用が非正規・低賃金労働ということでは、「システム移行」への抵抗も大きくなり、地域経済の活性化どころか、衰退に拍車をかけるものにもなりかねません。脱炭素化のための「システムの移行」は、貧困や格差をただし、国民の暮らしと権利を守るルールある経済社会をめざす、「公正な移行」でなくてはなりません。

自公政権は「解雇規制などの労働者保護があるから古い産業から新しい産業への労働移動が起きない」と言って、労働法制を改悪し、非正規雇用を増やす新自由主義の政治をすすめてきました。しかし、現実に起きたことは、労働法制の改悪で「新しい産業」でも不安定・低賃金の非正規雇用が急速に広がり、それと一体で正社員の長時間労働が激化したのです。労働条件が悪化する「雇用移動」は、リストラ・解雇などの強制力がなければ起きませんし、それが雇用の不安定化と貧困と格差の拡大をまねき、日本社会と経済にとっても大きな打撃となったのです。

脱炭素化のための「システムの移行」にさいして、こうした誤った道を繰り返してはなりません。再生可能エネルギーをはじめとした新しい成長分野でも、エネルギー転換の影響を受ける産業でも、人間らしく働ける雇用のルールを確立し、雇用と暮らしを抜本的に向上させることが「公正な移行」のために必要です。

気候危機の打開は、貧困と格差の是正と一体に――「公正な移行」として推進してこそ、達成することができます。

(4)脱炭素に向けた民間投資の促進と公的投資のための財源について

脱炭素に向けて、省エネや再生可能エネルギーのための民間投資と、脱炭素化に必要なインフラ整備のための公共投資が必要です。専門家の試算では、2030年までにCO₂ 半減を達成するためには、民間投資が150兆円、公共投資が50兆円という規模が必要です(未来のためのエネルギー転換研究グループ)。

■企業にとって利益を生み出し、将来性のある投資

省エネや再生可能エネルギーは、企業にとって利益を生み出し、将来性も大きく期待できる投資です。日本の大企業は400兆円を超える巨額の内部留保をもっています。史上最高の利益をあげてきたものの国内の需要が冷え込んでいるために、新たな投資先がないためです。脱炭素化を国家の大プロジェクトとしてすすめることは、こうした資金の新たな投資先になります。

■公共事業、エネルギー関連予算の転換で

公的投資は、先の試算では年間5兆円程度の規模が必要になりますが、現在でも年間25兆円規模の公共投資が行われており、巨大開発の見直しなど公共投資の転換でまかなうことができます。

中小企業や住宅などを支援するための無利子融資への利子補給などの財源は、それほど大きくありませんが必要です。こうした財源は、公共事業の転換とともに、原発に大きな比重を割いているエネルギー関連予算の抜本見直しでつくります。

2021年度予算をみると、エネルギー関連予算のうち、割合が最も多いのが原子力で33.8%(4,121億円)、次いで石油、石炭、ガスなどの化石燃料及び資源で20.7%(2531億円)です。省エネルギーや温暖化対策は19.8%(2,418億円)に留まっていす。エネルギー予算の7、8割を再生可能エネルギーに振り向けます。

■炭素税の拡充

炭素税は、スウェーデンではCO₂ 1トン当たり約1万7000円、フランスでは約5600円を課していますが、日本では温暖化対策税で1トン当たり289円と極めて低額にとどまっています。炭素税などのカーボンプライシングは化石燃料の使用を抑制する効果があるとともに、当面の財源にもなります。炭素税は、脱炭素が完了するまでの一時的な財源ですから、脱炭素に必要な公的な事業、支援策の財源としても検討していきます。

気候危機打開へ――いまの政治を変えるために力を合わせよう

脱炭素社会の実現は、私たち一人ひとりの決意と行動にかかっています。

一人ひとりが気候危機打開の主人公です。ライフスタイル、生活様式を見直すことも、自分の地域にある再生可能エネルギーを、地域のみなさんと力をあわせて開発・利用することも大切です。

同時に、個々人や家庭の努力だけでは、脱炭素は実現できません。気候変動の重大な危機は、石炭火力や原発に固執する、いまの政治を変えることなしには、打開することはできないからです。

いま、気候危機の打開を求める動きは世界で大きく広がっています。とくに、「Fridays For Future」(未来のための金曜日)という、若い人たちを中心にした運動が世界でも日本でも広がっていることは、明日に向けた力強い動きではないでしょうか。

地球を守り、将来の世代に豊かな自然環境を引き継ぐために、いまの政治を変えましょう。思想・信条の違いをこえて力をあわせることをよびかけます。

ジェンダー平等の日本へ いまこそ政治の転換を

日本共産党の田村智子政策委員長が10月1日の記者会見で発表した党の政策「ジェンダー平等の日本へ いまこそ政治の転換を」の全文は次の通りです。


いま私たちの社会は、口先だけの「男女共同参画」や「多様性の尊重」でなく、本気でジェンダー平等に取り組む政治を渇望しています。

コロナ危機は女性にさまざまな犠牲を強いました。低賃金の非正規雇用で働く多くの女性が仕事を失い、「ステイホーム」が強いられるもとでDV被害が急増し、女性の自殺の増加率は男性の5倍にも達しました。子ども、少女たちへの虐待・性被害相談も急増し、民間団体まかせは限界に達しています。

ここには、圧倒的に世界から遅れた日本の政治の責任があります。

日本は、各国の男女平等の達成度を示す「ジェンダーギャップ指数2021」(世界経済フォーラム)で、156カ国中120位と、先進国として異常な低位を続けています。

女性差別撤廃条約の採択(1979年)から42年。日本政府は1985年にこれを批准しながら、具体化・実施にまともに取り組んできませんでした。いま大きな問題になっている「男女賃金格差の縮小」も「選択的夫婦別姓への法改正」も、繰り返し国連の女性差別撤廃委員会から是正勧告を受けてきたにもかかわらず、まともにとりあわず、無視し続けてきたのです。

コロナ危機を経て、ジェンダー平等を求める国民の声は劇的に高まっています。「わきまえない」「もう黙らない」と急速に広がった女性たちの声が、女性差別発言をした五輪組織委員会会長を辞任に追い込みました。「生理の貧困」が話題になる中、これまでタブー視されていた生理の問題にも光が当たりました。「フェミサイド(女性を標的にした殺人)のない日本を」「フェミサイドは痴漢など日常の暴力の延長にある」と大学生たちが署名に立ち上がりました。私たち日本共産党は#WithYou(あなたとともに)の立場で連帯し、ともに声を上げていきます。

ジェンダー平等の社会とは、誰もが性別にかかわらず個人の尊厳を大切にされ、自分らしく生きられる、すべての人にとって希望に満ちた社会です。日本共産党は、来たる総選挙で、ジェンダー平等を大争点の一つと位置づけ、政治の転換を目指して全力をあげます。

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目次


1 男女賃金格差の是正をはじめ、働く場でのジェンダー平等を進めます

男女の賃金格差を政治の責任で是正します

■大きな男女の賃金格差――”生涯賃金で1億円”もの格差

●正社員でも、女性の賃金は男性の7割 (厚生労働省 賃金構造基本統計調査)

●非正規を含む平均給与は、男性―532万円、女性―293万円 (国税庁 民間給与実態統計調査)

●40年勤続だと生涯賃金では1億円近い格差に。年金でも大きな男女格差になり、定年まで働いても年金で生活できない女性も。

《国連からの勧告》

○性別賃金格差を縮小するため、取り組みを強化すること

賃金の平等はジェンダー平等社会を築くうえでの土台中の土台です。

EU(欧州連合)では、女性の賃金は男性の8~9割になっていますが、この格差を重大な問題として、今年3月、男女の賃金格差公表を企業に義務づけ、透明化をテコに是正させるEU指令案を発表しました。是正しない企業への罰金、ペナルティーも含まれています。

ところが日本では、自公政権が企業に男女賃金格差の実態を公表させることを拒み続けています。安倍政権がつくった「女性活躍推進法」では、賃金格差公表義務を盛り込むことさえ、財界の反対の意向をうけて拒絶しました。公表にすすむどころか、1999年3月までは有価証券報告書で記載が義務付けられていた男女別平均賃金を「省令改正」で削除するなど、賃金格差の実態を覆い隠す逆行を行ってきたのです。

○企業に男女賃金格差の実態の把握・公表と、その是正計画の策定・公表を義務付けます

――企業に男女別平均賃金の公表、格差是正計画の策定・公表を義務づけます。国は、その是正計画が実行されるように指導・監督を行います。

――国としても、職種、時間当たり、企業規模、地域ごとに、男女賃金格差の実態を把握、分析し、国としての是正の行動計画を策定します。

○女性が多く働く介護・福祉・保育などケア労働の賃金を引き上げます

保育や介護など女性が多く働くケア労働は、高度な専門性をもつ仕事でありながら、低賃金であるのが当たり前にされ、平均給与は全産業平均より月約10万円も低いという実態が長らく放置されてきました。

――国が基準を定めている介護、保育の賃上げや労働条件の改善、配置基準の見直しを国の責任で行うとともに、雇用の正規化、長時間労働の是正に取り組みます。

○非正規から正社員への流れをつくるとともに、非正規雇用の労働条件改善と均等待遇を進めます

労働法制の規制緩和によって、女性の非正規雇用化が進み、働く女性の56%がパート、派遣、契約などの非正規雇用です。

――非正規から正社員への流れをつくります。労働者派遣法を抜本改正し、派遣は一時的・臨時的なものに限定し、常用雇用の代替を防止する、正社員との均等待遇など、派遣労働者の権利を守る派遣労働者保護法をつくります。

――最低賃金を1500円に引き上げます。そのために、社会保険料の減免や賃金助成など中小企業への支援を抜本的に強化します。

○実質的な女性差別を横行させている間接差別をなくします

明文上は性別差別でなくても、転勤や長時間労働に応じるかどうかで、基本給や昇給昇格での差別を当然とする就業規則や雇用慣行によって、実際には女性を差別し、賃金格差の要因になっている間接差別をなくします。

――労働基準法をはじめとする関係法令に、間接差別の禁止、同一価値労働同一賃金の原則を明記し、差別の是正を労働行政が指導できるようにします。

家族的責任と働くことを両立できる労働のルールをつくります

女性は、男性の長時間労働を支えるために、家族的責任をより重く担うことが当然とされてきました。男性も、子育てに参加したくてもできない実態が広く存在しています。長時間労働をなくすことは、ジェンダー平等社会の実現に不可欠です。

――過労死をうむ異常な長時間労働をなくし、「8時間働けばふつうに暮らせる社会」にします。いますぐ残業時間の上限を「週15時間、月45時間、年360時間」にします。

――家族的責任を持つ労働者は、男女を問わず、単身赴任や長時間通勤を伴う転勤を原則禁止し、看護休暇や育児介護休業制度を拡充します。残業は本人同意を原則とします。これらの措置が、昇給昇格において不利益な評価とされることを禁止します。

ハラスメントを明確に禁止し、なくします

●セクハラに対する刑事罰、民事救済の規定を持つ法律がない国は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本、チリ、ハンガリーの3カ国だけ。(世界銀行、2018年調査)

●ILO(国際労働機関)は2019年、「労働の世界における暴力とハラスメント禁止条約」(190号条約)を採択。日本経団連は、就活生など雇用関係にない人が保護の対象となることに異を唱え、棄権。

《国連からの勧告》

○職場でのセクシュアルハラスメントを防止するため、禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を行うこと

ハラスメントは、女性が働き続けることを阻害する大きな要因の一つです。現行法は、予防措置を事業所などに義務づけているだけで、ハラスメント禁止が明文化されておらず、セクハラ、マタハラ、パワハラ、SOGI(ソジ)ハラなどが人権侵害であり犯罪であるということが徹底されていません。

――ハラスメント禁止規定をもつ実効ある法整備を進め、働く場での暴力とハラスメントを広く禁じたILO190号条約を批准します。

――ハラスメントの加害者の範囲を、使用者や上司、職場の労働者にとどめず、顧客、取引先、患者など第三者も含めるとともに、被害者の範囲も就活生やフリーランスを含め、国際水準並みに広く定義します。

――被害の認定と被害者救済のために、労働行政の体制を確立・強化するとともに、独立した救済機関を設置します。

――お茶くみやメガネ禁止、パンプスやミニスカートの制服などが女性のみに課されている職場での慣行をなくす規定を盛り込んだ法律を制定します。

2 選択的夫婦別姓、LGBT平等法を実現し、多様性が尊重される社会をつくります

●法律で夫婦同姓を義務づけている国は日本だけ。

●結婚時に女性が改姓する例が96%。

●同性婚を認める国・地域は約30。日本でも同性カップルを認証するパートナーシップ制度を導入する自治体が118に広がり、総人口の40%をカバー。(「自治体にパートナーシップ制度を求める会」調べ)

●選択的夫婦別姓「賛成」が78%(20~30代) (2020年11月、早稲田大学法学部・棚村政行研究室/選択的夫婦別姓・全国陳情アクション合同調査)

●同性婚「認めるべき」が86%(18~29歳)(2021年3月、朝日新聞世論調査)

《国連からの勧告》

○女性が婚姻前の姓を保持できるよう夫婦の氏の選択に関する法規定を改正すること

夫婦・家族のかたちはさまざまであり、それぞれの選択に寛容な社会をつくっていくことが急務です。世論調査でも、とりわけ若い世代の中で、選択的夫婦別姓や同性婚の導入に賛成の意見が多数であり、実現の機は熟しています。

しかし、自民党は党内に強固な反対派議員を抱え、結局は選択的夫婦別姓も同性婚もLGBT差別反対法も、すべて実現にフタをしてきました。もういいかげんに実現しましょう。そのためには自民党政権を終わらせる以外にありません。

――選択的夫婦別姓制度をいますぐ導入します。

――同性婚を認める民法改正を行います。

――LGBT平等法を制定し、社会のあらゆる場面で性的マイノリティーの権利保障と理解促進を図ります。

3 「痴漢ゼロ」の実現、女性に対するあらゆる暴力を根絶します

●コロナ禍のもと女性への暴力が増大。DV被害相談は前年の1・6倍、性暴力被害ワンストップ支援センターへの相談は前年の1・2倍に。

性暴力は取り返しのつかない「魂の殺人」であり、ジェンダー格差再生産の要因でもあります。その根絶は政治の緊急かつ根本の課題です。

「痴漢ゼロ」を政治の重要な課題に位置づけます

女性や子どもにとって、もっとも身近な性暴力が痴漢です。日本共産党東京都委員会の痴漢被害アンケート調査(1435人が回答)では、ほとんどの女性が経験し、その後の人生に深刻な打撃をこうむりながら、被害を訴えることもできない実態が明らかになりました。政治がこれを正面から問うてこなかったことが、痴漢を”軽い問題”扱いし、女性の尊厳を軽んじる社会的風潮を広げてきました。

――痴漢被害の実態を調査し、相談窓口の充実、加害根絶のための啓発や加害者更生を推進します。そのために内閣府に担当部局を設け、警察庁や民間事業者とも連携しながら政府あげて取り組むことを求めます。

刑法・DV防止法を改正し、被害者支援を強めます

《国連からの勧告》

○強姦(ごうかん)の定義を拡張するとともに、性犯罪の職権による起訴を確保するための刑法の改正を促進すること

○配偶者強姦が明示的に犯罪化されていないこと、性交同意年齢が13歳のままであることを懸念する

――刑法性犯罪規定について、暴行脅迫要件の撤廃、同意要件の新設、地位関係利用型の犯罪化、公訴時効の廃止、性交同意年齢の引き上げなど、性被害の実態に見合った改正を早急に進めます。

――「性的な写真をSNSにアップされた」「女性が意見を主張すると誹謗(ひぼう)中傷が殺到」など、オンライン上の暴力は人の命すら奪いかねない人権侵害です。通報と削除の仕組みの強化、被害者のケアの体制をつくります。

――DV防止法を改正し、緊急保護命令の導入や保護対象の拡大、加害者更生プログラムの整備などを進めます。

――性暴力被害ワンストップ支援センターに対する予算の抜本的な拡充、若年女性やさまざまな困難を抱える女性がアクセスしやすい相談窓口、シェルターの拡充など、性暴力、DV・虐待被害者支援を緊急に強めます。

日本が責任を負う戦時性暴力=「慰安婦」問題の解決を進めます

《国連からの勧告》

○指導者や公職にある者が「慰安婦」問題に対する責任を過小評価し、被害者を再び傷つけるような発言はやめること

○被害者の救済の権利を認め、十分かつ効果的な救済および賠償を提供すること

○「慰安婦」問題を教科書に適切に組み込み、歴史の事実を子どもたちや社会に客観的に伝えること

――日本政府に、日本軍「慰安婦」に対する加害の事実を認め、被害者への謝罪と賠償の責任をはたさせます。「軍の関与と強制」を認め、歴史研究や歴史教育を通じて「同じ過ちを決して繰り返さない」とした「河野談話」にそい、子どもたちに歴史の事実を語り継いでいきます。

4 リプロダクティブ・ヘルス&ライツの視点にたった政治を

■リプロ(性と生殖)に関する日本の遅れ

●教育の遅れ――「寝た子を起こすな」などの性教育に対するバッシングが2000年代に自民党によって行われた影響が尾を引き、公教育での性教育がきわめて不十分

●避妊の遅れ――女性に選択権がある多様な避妊法が十分に普及しておらず、緊急避妊薬も入手しづらい

●中絶の遅れ――女性の心身を傷つける掻爬(そうは)法が中絶手術の主流となっており、70カ国以上で承認されている経口中絶薬が未承認

●法律の遅れ――刑法の堕胎罪、中絶に配偶者の同意を要件とする母体保護法など、女性差別的な法律が残っている

《国連からの勧告》

○思春期の女子および男子を対象とした性と生殖に関する教育が学校の必修カリキュラムの一部として一貫して実施されることを確保すること

○刑法の堕胎罪をなくすこと

○母体保護法を改正し、配偶者の同意要件をなくすこと

リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)は、子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決める基本的人権です。性と生殖に関する健康や、それについての情報を最大限享受できることも、大事な権利の一環です。

ところが日本では、性教育がきわめて不十分です。子どもたちは、人間の生理や生殖、避妊についての科学的な知識も、互いを尊重し合う人間関係を築く方法も、自分の心や体を傷つけるものから身を守るすべも十分に学べないまま、成長していきます。社会には意図的に中絶へのスティグマ(負の烙印〈らくいん〉)が広げられ、明治期から残る刑法の自己堕胎罪もあいまって、多くの女性が深い苦しみを抱えてきました。リプロ(性と生殖)に関しても、先進国ではありえない遅れを抱えているのが日本です。

一方、過去1年間に金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある若者が5人に1人にのぼることが明らかになり(「みんなの生理」アンケート、2021年3月)、「生理の貧困」がみんなの問題として議論される大きな前向きの変化も生まれました。

――子どもの年齢・発達に即した、科学的な「包括的性教育」を公教育に導入します。

――避妊も中絶も、女性の大切な権利です。避妊薬と緊急避妊薬を安価で入手しやすくします。中絶薬を早期に認可し、中絶医療を国際水準まで高めます。

――明治期から残る刑法の自己堕胎罪や、母体保護法の配偶者同意要件を廃止します。

――生理用品の恒久的な無償配布、学校など公的施設のトイレへの設置を進めます。非課税の対象とするなど、より安価で入手しやすくします。

――職場や学校などでも生理に関する知識や理解を深め、女性が過ごしやすい環境を整えます。

――安全な妊娠・出産のための周産期医療体制を充実させます。国の制度に位置づけられた産後ケアセンターを充実させます。

5 意思決定の場に女性を増やし、あらゆる政策にジェンダーの視点を貫く「ジェンダー主流化」を進めます

90年代以降、世界は「ジェンダー主流化」を合言葉に、根強く残る男女格差の解消を進めてきました。「ジェンダー主流化」とは、あらゆる分野で、計画、法律、政策などをジェンダーの視点でとらえ直し、すべての人の人権を支える仕組みを根底からつくり直していくことです。

そのためにも、政治家や、企業の管理職はもちろん、各種団体、地域など、あらゆる場面で女性の参画を進めることが求められています。意思決定の場に女性を増やすことは、ジェンダー平等を進めるために欠かせません。

――「2030年までに政策・意思決定の構成を男女半々に」の目標をかかげ、積極的差別是正措置を活用した実効性ある本気の取り組みを進めます。

――政治分野における男女共同参画推進法の立法趣旨に沿い、パリテ(男女議員同数化)に取り組みます。民意をただしく反映するとともに女性議員を増やす力にもなる比例代表制中心の選挙制度に変えます。高すぎる供託金を引き下げます。

――女性差別撤廃条約を実効あるものにするため、「調査制度」と「個人通報制度」を定めた選択議定書を、早期に批准します。

二つの大問題を断ち切りましょう

世界でも異常な日本のジェンダー平等の遅れの大もとには、二つの大問題があります。

一つは、明治時代に強化されたジェンダー差別の構造を、自民党政治が今日まで引き継いでいることです。「男性が主、女性は従」「女性は結婚したら家に入る」など、明治憲法下の家父長制の日本を「美しい国」だったと考える人たちが自民党政権の中枢にすわっているために、選択的夫婦別姓も、同性婚・LGBT平等法も、実現をはばまれ続けています。

もう一つは、女性を安上がりの労働力として利用したいという財界の意向のままに、自民党政治が女性差別の構造を幾重にも積み重ねてきたことです。とくにこの間、女子保護規定の撤廃、派遣労働の全面解禁、労働時間規制の緩和などの雇用破壊が進み、子どもがいる女性は非正規を選ばざるを得ない状況に追い込まれてきました。

古い価値観と財界言いなりの政治――この二つを断ち切るには自民党政治を終わらせる以外にありません。日本共産党は綱領に「ジェンダー平等社会をつくる」ことを掲げ、全国津々浦々で湧きおこっている運動と声なき声に「ともにある」という姿勢で連帯することを決議した党として、この総選挙で新しい日本を切り開くために力を尽くします。

 

 

コロナ危機を乗り越え、暮らしに安心と希望を――日本共産党の新経済提言

日本共産党の志位和夫委員長が9月22日の記者会見で発表した「コロナ危機を乗り越え、暮らしに安心と希望を――日本共産党の新経済提言」の全文は次のとおりです。


目次


弱肉強食の新自由主義を終わらせ、命と暮らしを大切にする政治への転換を

コロナ危機は、日本社会のさまざまな問題を浮き彫りにしています。非正規雇用で働く人たちが真っ先に仕事を奪われました。まともな補償もせずに”自粛”を押しつける政治が、中小企業、個人事業主、文化・芸術、イベント関係者を追い詰めました。「小さな政府」の名で公的部門が縮小させられ、医療や保健所が弱体化し、医療崩壊が現実になりました。自民党・公明党の政権が長年とってきた弱肉強食と自己責任おしつけの新自由主義の政治がもたらした人災にほかなりません。

その一方で、「規制緩和」や優遇税制で富裕層や大企業の目先の利益追求は擁護され、一部の富裕層、巨大企業は、コロナ危機でも利益を増やし、巨額の資産をため込んでいます。

国民に冷たく、富裕層にあたたかい、中小企業に厳しく、大企業は守る――新自由主義の政治は、もう終わりにして、命と暮らしを何よりも大切にする政治に切り替えましょう。

1、医療、介護、保育、障害者福祉など、ケアをささえる政治に

自公政権は、40年にわたって社会保障削減の政治を続け、この20年間は社会保障予算の「自然増」を、毎年、数値目標を決めて削減する政治を続けてきました。こんなことをすれば、医療や公衆衛生が脆弱(ぜいじゃく)になるのも当然です。医療崩壊と保健所の機能マヒを再び起こしてはならない――これはコロナ危機の痛苦の経験を踏まえた政治の重い責任です。

■自公政権のもとで、日本の医療・公衆衛生に何が起きたのか

●医師数の抑制、病床削減、病院の統廃合を長期間、系統的に続けた

“医者が増えると医療費が膨張する”と、自公政権が医師数の抑制を続けた結果、日本の医師数は人口1000人当たり2・4人、OECD(経済協力開発機構)加盟36カ国中32位、加盟国の平均(人口1000人当たり3・4人)に14万人少ない水準です。

病院数は、1990年のピーク時から1796も減りました。感染症病床は半分程度に減らされ、ICU(集中治療室)の病床数も、日本はイタリアの半分以下、ドイツの6分の1です。

●全国の保健所は半分に

自公政権は、「行革だ」といって、全国の保健所を852カ所(1992年度)から469カ所(2020年度)へと半分に減らしました。

●感染症予算は、アメリカの72分の1、中国の35分の1

「平時の感染症関連予算」は、米国5300億円、中国2600億円、イギリス283億円に対し、日本は74億円にすぎません。国立感染症研究所など研究機関の予算・人員を削減し続けてきた結果です。

■”コロナ後”も医療削減――医療崩壊を反省しない自公政権

●公立・公的病院の削減・統廃合を推進

政府は、高度急性期病床、急性期病床を20万床減らすことを目標に、全国の400以上もの公立・公的病院をリストアップして削減・統廃合を推進し、そのために消費税増税分を財源にした「病院削減補助金」までつくりました。

●75歳以上の医療費の窓口負担を来年10月から値上げ

●政府の「骨太方針2021」には、新興感染症の脅威に対応するための医療体制の拡充も、保健所を増やす対策もない

日本共産党は「医療・公衆衛生 再生・強化プログラム」を提案します

長期にわたって壊されてきた医療と公衆衛生を立て直すには、中長期の展望をもって戦略的に基盤を強化していくことが必要です。日本共産党は、壊された基盤を立て直すために「医療・公衆衛生 再生・強化プログラム」を提案します。

○感染症病床、救急・救命体制への国の予算を2倍にするとともに、ICU病床への支援を新設して2倍にします。

平時から感染症対応の基盤を強化し、流行時には緊急対応・臨時的な増強ができるようにします。

――感染症病床を2倍にするために、国の補助金(現行130億円)を2倍にします。

――救急・救命体制への国の補助金を2倍(現行250億円)にし、救急用の病床を増強します。

――新しい国の補助制度(1000億円規模)をつくり、ICU病床(HCU〈高度治療室〉を含む)を2倍にします(新規1床当たり500万円の補助を2万床分。ICUは診療報酬で運営しているが多くが赤字)。

○公立・公的病院の削減・統廃合を中止します。

○医師の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続します。

政府は、医師削減のために医学部定員を82年、97年の2回にわたって削減しました。その後、「医師不足」が大きな社会問題になり、2008年から「臨時措置」として1割程度増員しました。ところが自公政権は、この増員分を削減した上に、もっと削減するとしています。医師削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続します。自公政権が強行した、病院の勤務医に「過労死ラインの2倍」の時間外労働をおしつける法改悪を撤回し、医師の長時間・過密労働の解消をすすめます。

○来年の診療報酬改定で、看護師の配置基準と労働条件の改善、新感染症に対応した診療報酬体系などを抜本的に充実させます。

○保健所予算を2倍にして、保健所数も、職員数も大きく増やします。

現行の保健所費は、総額2100億円です。これと同額の予算を国が支出して保健所体制を増強します。

○国立感染症研究所・地方衛生研究所の予算を拡充し、研究予算を10倍にします。

国立感染研の基礎的研究費20億円を10倍の200億円に増やし、平時の感染症予算を280億円に増額します。

都道府県の地方衛生研究所への国の補助金をつくり、予算規模を2倍にします(現行1カ所平均4億円を国の補助金を300億円程度投入して2倍化する)。

○感染症に対応する、政府から独立した科学者の専門機関(感染症科学者会議・仮称)を新たにつくります。

自公政権のコロナ対応は、科学無視、専門家の意見の軽視という致命的な欠陥があります。政府から独立した科学者の専門機関をつくり、感染症についての科学的知見を、政府を通さずに、直接、国会と国民に明らかにできるようにします。

必要な国の予算額は、総額で4000億円程度です。国の予算全体から見れば大きな額ではありません。例えば、安倍・菅政権の9年間で軍事費を6000億円増やしました。米国製兵器の”爆買い”などの結果ですが、国民の命を守るための予算、感染症流行という「有事」への備えとして、この程度の予算を医療・公衆衛生の再生・強化に充てるのは十分可能です。

ケア労働の待遇改善、社会保障の拡充を行います

○国が基準を定めている、介護・保育などケア労働の待遇を国の責任で改善します。

介護職員や保育士の平均給与は全産業平均より「月10万円低い」など劣悪な労働条件は長らく放置され、現場は慢性的な人手不足に苦しんでいます。介護・福祉・保育職員の賃金を国の責任で引き上げ、配置基準の見直し、雇用の正規化、長時間労働の是正など、労働条件を改善します。

○命を守り、暮らしを支える社会保障を拡充します。

――すべての年金の土台である基礎年金を、今後20年にわたって減らし続けるマクロ経済スライドなど年金削減の仕組みを撤廃し、「減らない年金、頼れる年金」を実現します。そのために、高額所得者優遇の保険料を見直し1兆円規模で年金財政の収入を増やす、巨額の年金積立金を年金給付に活用する、賃上げと正社員化をすすめて保険料収入と加入者を増やす、という改革をすすめます。

――介護保険料・利用料の減免、保険給付の拡充、特養ホームなど介護施設の増設により、必要な介護が受けられる制度にします。

――障害者福祉・医療の「応益負担」を撤廃し、無料にします。

――公費を1兆円投入し、「人頭税」のような「均等割」「平等割」をなくして国民健康保険料(税)を抜本的に引き下げます。

生活に困っている人への支援を抜本的に強化します

○コロナ危機で収入が減った人、生活に困っている人に一律10万円の特別給付金を数兆円規模で支給します。

○生活保護を「生活保障制度」に改め、必要な人がすべて利用できる制度に改革します。

――自公政権が行った生活保護費削減・生活扶助費の15%カットを緊急に復元し、支給水準を生存権保障にふさわしく引き上げていきます。

――保護申請の門前払いや扶養照会をやめます。自動車保有禁止、わずかな預貯金など「資産」を理由に、保護利用を拒む運用を改めます。

――名称も「生活保障制度」に改め、権利性を明確にし、生存権保障にふさわしい制度に改革します。

○食と住居への支援をすすめます。

――「住居確保給付金」「生活福祉資金特例貸し付け」の支援の延長・拡大、返済困難な場合は「貸し付け」を給付に切り替えるなど、緊急の支援を強化します。「住まいは人権」の立場で、家賃補助や公的住宅をはじめ住居へのセーフティーネットをつくり、困窮者が住居を失わないための施策を拡充します。

――フードバンク、子ども食堂など民間の食料支援の取り組みに、助成や場所の提供など公的な支援を行います。

2、働く人の「使い捨て」をやめさせ、8時間働けばふつうに暮らせる社会に

■コロナ危機で、非正規雇用の労働者、とくに女性と若者に大きな犠牲

●コロナ前と比べて、非正規労働者は月平均で92万人が減少し、その58万人は女性。

●「休業者」は、昨年4月には306万人、5月には432万人も増加。その6割以上が非正規。女性も6割以上。(「休業者」…月の就労がゼロ~10日以下 総務省労働力調査)

非正規労働者は「調整弁」にされたうえに、失業や休業に対するセーフティーネットもきわめて貧弱です。とりわけシフト制労働者は、仕事が減っても「休業」だと企業が認めないために、雇用調整助成金や休業支援金の対象からも外され、無収入となる労働者が続出しました。政府が「雇用によらない働き方」の名のもとで拡大してきたフリーランスやインターネットを介して単発・短期の仕事を請け負うギグワーカーには労働法制が及ばず、権利ゼロの働き方が強いられています。

非正規雇用の拡大は、正社員も含めた労働者全体の賃金・労働条件を引き下げる大きな圧力になっています。とくに、長時間労働は、健康にとって重大であるだけでなく、子育てや介護などの家族的責任を果たせないなど、働く女性の非正規化とジェンダー不平等社会の大きな要因にもなっています。

○非正規から正社員への流れをつくるとともに、格差を是正する均等待遇をすすめます。

――シフト制労働者の権利を守るために、労働契約に賃金の最低保障額や休業手当の支給を明記するなどのルールをつくります。ギグワークなどの無権利な働かせ方を広げる規制緩和に反対し、権利保護のルールをつくります。

――労働者派遣法を抜本改正し、派遣は一時的・臨時的なものに限定し常用雇用の代替を防止する、正社員との均等待遇など、派遣労働者の権利を守る派遣労働者保護法をつくります。

――パート・有期雇用労働者均等待遇法の制定など、正社員との均等待遇をはかるとともに、解雇・雇い止めを規制します。

○中小企業への賃上げ支援を抜本的に強化しながら、最低賃金を引き上げます。

――最低賃金を時給1500円に引き上げ、全国一律最賃制を確立します。

――社会保険料の減免や人件費補助など、中小企業への賃上げ支援を抜本的に強化します。

○長時間労働をなくし、労働者の権利が守られる社会にします。

――異常な長時間労働を解消し、過労死を根絶します。残業時間の上限を「週15時間、月45時間、年360時間」とし、連続11時間の休息時間(勤務間インターバル制度)を確保します。長時間労働を是正し、男女ともに家族的責任を果たし、家族と過ごす時間、自分のために使える時間を持てる、本物の働き方改革をすすめます。

――高度プロフェッショナル制度を廃止し、企画業務型の廃止など裁量労働制を抜本的に見直します。

――退職強要を許さず、解雇規制法をつくります。

――職場におけるパワハラ、セクハラをなくす労働行政を強化するとともに、ILO(国際労働機関)のハラスメント禁止条約を批准します。ハラスメント禁止を法律に明記します。

3、お金の心配なく、学び、子育てできる社会に

コロナ危機は、学生や子どもたちの学び、教育にも深刻な打撃となりました。教育に”お金をかけない政治”を根本から改める必要があります。

■日本の教育への公的支出は先進国最低水準

OECD加盟国で比較可能な38カ国中37位。(2020年9月 OECD発表)

○高い学費の値下げと本格的な給付奨学金制度をつくり、誰もがお金の心配なく学べるようにします。

「バイトがなくなりお金がない」「1日1食」など、多くの学生が食事にも事欠くような困窮に陥りました。高い学費と劣悪な奨学金制度のために、アルバイトをしないと学生生活が成り立たない現状を、コロナ危機が直撃したのです。

ヨーロッパの国々は、学費無償か、ごく少額であり、日本の高学費は世界でも異常です。教育を受ける権利は経済的事由で制約されてはなりません。政府は「受益者負担」と言いますが、高等教育は、学んだ学生が社会の各分野の働き手になるわけで、社会全体の力として必要不可欠なものであり、無償化こそめざすべき社会のあり方です。

――大学・短大・専門学校の学費をすみやかに半額に引き下げ、高等教育の無償化をめざします。

――入学金制度をなくします。高額の入学金を払わせ、入学しなくても返金しないというのは合理性がありません。

――「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人(現在の奨学金利用者の半数)が利用できる制度をつくり、拡充していきます。すべての奨学金を無利子にします。奨学金返済が困難になった場合の減免制度をつくります。

――学生支援緊急給付金の継続的な実施、休学や卒業延期した学生の学費補助など、コロナ対応の支援を抜本的に強化します。

○子育て、教育の負担を軽減し、家計を応援するとともに、貧困から子どもを守り教育の機会を保障します。

――私立高校の負担の軽減をすすめ、高校教育の無償化をすすめます。

――「義務教育は無償」を定めた憲法26条にそくして、学校給食の無償化をすすめます。義務教育で残されている教育費負担をなくします。

――認可保育所を30万人分増設し、保育水準を確保しながら待機児童を解消します。

――児童手当の18歳までの支給、児童扶養手当、就学援助の額と対象の拡大など、子育て世帯に向けた継続的・恒常的な現金給付を拡充します。

4、コロナ危機で困難に直面している中小企業、農林水産業を支援し、地域経済を立て直す

■まともな補償がないなかでコロナ倒産・廃業が急増

●中小企業の休廃業・解散は、2020年には5万件と14・6%増。

●「廃業を検討」……飲食店、宿泊業は3割以上、中小企業全体でも12社に1社にあたる8%にのぼる。

●コロナ前と比べて売上高は、中小企業の67・8%で減少。宿泊業や飲食業では4割超の企業が「半減以下」。(東京商工リサーチ調べ)

“緊急事態宣言は4回、持続化給付金は1回限り”……この背景には、コロナ危機であろうが「競争に敗れた者は市場から出ていけ」という、「競争と自己責任」の新自由主義の政治があります。政府の「骨太の方針2021」では、「生産性向上等に取り組む中小企業・小規模事業者に対し思い切った支援を行う」と、中小企業を上から選別し、多くの中小企業は見捨てる方針を明確にしています。今年10月から登録が開始されるインボイス(適格請求書)によって、小さな事業者やフリーランスで働く人たちが取引や仕事から排除される危険が大きく、ここでも「淘汰(とうた)」がすすもうとしています。

中小企業を淘汰する政治から、中小企業が、コロナ危機を乗り越え、希望がもてる政治への転換をすすめます。

○まともな補償をすみやかに行い、コロナ危機の中で必死にがんばっている中小企業・小規模事業者を応援する政治に切り替えます。

――持続化給付金や家賃支援給付金を再度支給するとともに、コロナ危機を乗り越えるまで継続的に支給します。

――協力金、支援金などの拡充と迅速化を行います。「書類不備」というだけで説明もせずに請求を「追い返す」審査を改め、事業者の立場にたった、ていねいな対応と相談体制を確立します。

――コロナ対応の緊急借り入れで積みあがった中小企業の債務をどう解決するかが大きな問題になっており、コロナ対応借入分の軽減・免除する仕組みをつくります。

――雇用調整助成金特例措置をコロナ危機を乗り越えるまで継続します。

――文化・芸術関係者に対して、新たなイベントへの支援にとどめず、「場と担い手」への支援を行うとともに、国費を数千億円単位で支出して「文化芸術復興創造基金」を抜本的に強化します。

○多様な中小企業の維持・発展を底支えし、地域経済の疲弊に歯止めをかけます。

――中小企業予算を1兆円規模に増額します。

――中小企業憲章と小規模企業振興基本法を生かし、「競争と淘汰」から、すべての中小企業・小規模企業を対象にする中小企業政策に転換します。

――大企業の中小企業に対する優越的地位の乱用をやめさせ、公正な取引を保障するルールをつくります。

――コンビニ本部による「もうけ本位」の”搾取システム”を改め、24時間営業の見直し、ドミナント(集中的)出店の規制など、コンビニオーナーの営業と健康を守ります。

米価の大暴落を止め、農林水産業を守る

コロナ危機は米価大暴落や畜産、野菜、漁業など農林水産業に大きな打撃となっています。

今年の米価は、仮払金や買い取り価格が2~4割も下落しています。自公政権は、農業にも自己責任を押し付け、2018年には、政府が生産調整から「撤退」して農業者任せにしてしまいました。そこへコロナ危機による需要減が直撃して、米価の大暴落が起きたのです。

――所得補償・価格保障など家族経営をはじめ農業経営を支援するとともに、無制限な輸入に歯止めをかけ、過去最低まで低下した食料自給率を引き上げます。

――緊急の米価大暴落対策として、政府による米の緊急買い入れを実施し、過剰在庫を市場から隔離します。政府が買い入れた米は、生活困窮者、学生、子ども食堂などに供給します。国内市場を圧迫している海外産のミニマムアクセス米の買い入れを中止します。

――コロナ危機での木材輸送の世界的な減少や米中の需要急増による「ウッドショック」(木材の不足・価格高騰)が深刻です。国が国内流通状況を調査し、便乗値上げ・買い占めを監視します。入荷の遅れなどの被害は、コロナ危機の被害として支援します。輸入材依存を是正し、木材自給率を高めるために、国内材の公的事業での使用拡大、民間の利用拡大への支援など、林業の再生に力を入れます。

――魚価の低迷や、海水温の上昇、海流の変化などによる不漁で経営困難に陥っている漁業者への魚価の補償、経営支援を行います。

5、税金の不公平をただす――消費税減税、富裕層・大企業への優遇をなくす

■コロナ危機でも税収が2・4兆円も増えた不思議……”コロナ直前”の消費税増税で

●2020年度の税収――2・4兆円増。消費税10%増税の結果、大不況でも消費税収だけで3・2兆円も増収。国民は”コロナ危機と増税”のダブルパンチ。

●大企業の税の実質負担率は中小企業より低い。所得1億円を超えると税負担率が下がる。

自公政権が2019年10月に強行した消費税増税は、コロナ危機で苦闘する中小企業者にも、仕事がなく生活が苦しい非正規労働者にも、重くのしかかりました。

一方、大企業は、コロナ危機でも内部留保を7兆円も増やしました(2020年度)が、大企業の税負担は、さまざまな税制の優遇によって、実質負担率10%という中小企業よりはるかに低くなっています。株価の上昇で大株主などの富裕層は、資産を倍に増やしました。ところが、株の値上がりの利益への税率は20%という、欧米の富裕層への税率に比べても低い税率になっているため、株の利益が所得の大半を占める年間所得1億円超の富裕層では、所得が増えるほど税負担率が下がるという逆立ち現象が起きています。

コロナ危機のもとでも浮き彫りになった、不公平税制をただします。

資本階級別の法人税実質負担率(2019年度)

 

所得階級別の所得税負担率(2019年分)

○消費税率を5%に引き下げ、インボイス制度の導入を中止します。

――消費税率を自公政権が2度にわたって引き上げる前の5%に引き下げます。

――コロナ危機で納税困難に陥っている事業者に消費税を減免します。

――政府が導入を予定しているインボイス制度は、零細業者やフリーランスに納税義務を広げ、負担と格差をさらに拡大するものであり、ただちに中止します。

○大企業と富裕層に応分の負担を求めます。

――租税特別措置や連結納税など、大企業優遇税制を廃止・縮小します。

――法人税率を、中小企業を除いて安倍政権以前の28%に戻します。

――富裕層の株取引への税率を欧米並みの水準に引き上げます。株の配当や譲渡益が分離課税とされ、住民税を含めても20%と国際的にも低い税率になっている現状を改めます。譲渡所得には、高額部分には欧米なみの30%の税率を適用します。株式配当には、少額の場合を除いて分離課税を認めず、総合累進課税を義務づけます。これによって富裕層の配当所得には所得税・住民税の最高税率が適用されます。

――所得税・住民税の最高税率を現行の55%から65%に引き上げます。

――富裕層の資産に毎年低率で課税する富裕税や、為替取引額に応じて低率の課税を行うなど、新たな税制を創設します。

――厚生年金や健康保険、介護保険など、サラリーマンの社会保険料は標準報酬に上限があるため、企業役員など高所得者の負担が低くなっており、上限を引き上げるなど応能負担の改革を行います。

応能負担の税制改革で、暮らし・社会保障の財源は確保できます

消費税が導入されてから33年間に、消費税の税収は448兆円ですが、ほぼ同じ時期に法人3税は323兆円、所得税・住民税は286兆円も減りました。「社会保障のため」といって行われた消費税の増税は、実際には、法人税や所得税の減収の穴埋めに消えたのです。

大企業や富裕層に応分の負担を求める税制改革で「税収の穴」をふさぎ、社会保障や暮らしの予算を確保します。同時に、歳出のムダも聖域なく削減します。

消費税、法人3税、所得税・住民税の推移(2021年7月現在)

6、気候危機打開と一体に、災害に強い社会をつくる

気候危機が災害の危険を増大させ、豪雨や土砂災害など災害の頻度と規模が増大しています。日本共産党は、「気候危機を打開する2030戦略」を発表しています。気候危機打開と一体に、災害に備え、被災者を救済し、安全と安心を保障することは、政治の大きな責任です。

――被災者生活再建支援法の支援金を300万円から500万円に引き上げるとともに、対象を「一部損壊」まで広げます。

――乱開発を規制し、盛り土の崩壊やがけ崩れ、堤防決壊、液状化被害などの危険箇所の点検と対策を実施します。必要な防災施設を整備し、災害に強いまちづくりをすすめます。

――ダムに偏重した治水対策を転換し、河道や堤防の整備、浸水時に対応した土地利用計画の樹立など、流域住民の参加と合意による流域の一体的な管理をすすめます。

提言実行のための財源――緊急の対応は国債で、恒久施策は税財政の民主的改革で

この提言を実行するための財源は、次の考え方でつくります。

①コロナ危機への対応など、緊急かつ臨時的に必要となる対策は、この提言では20兆円をこえる規模となりますが、その財源は、あくまで臨時的・一時的な支出であり、国債の増発によって賄います。命と暮らしを大災害から守るためには、必要な財政支出は当然です。

②消費税減税や社会保障の拡充、教育費負担の軽減など、コロナ収束後も恒常的に必要となる施策の財源は、恒久的な財源を確保する必要があります。この提言では19兆円程度になります。

大企業優遇税制の見直し、法人税率を中小企業を除いて安倍政権以前の水準(28%)に戻すことで8兆円、富裕層への税負担の見直しで約3兆円、富裕税や為替取引税の創設で約3兆円、軍事費や大型開発の浪費の削減などで約5兆円――あわせて19兆円を確保することで、恒久的な財源を賄います。

暮らしと家計応援の政治こそ、コロナ危機からの経済立て直しの大道です

コロナ感染による経済危機は、日本経済の主役が個人消費=家計消費であることを、改めて示しました。大企業が利益や内部留保を増やしても、いくら株価が上昇しても、コロナ危機で個人消費が落ち込んだために、日本経済はリーマン・ショックを上回る大打撃を受けました。暮らしと家計を応援する政治は、コロナ危機から日本経済を立て直すうえでも大切です。

世界でも新自由主義からの転換をめざす動きが広がっています。コロナ危機のもとで消費税(付加価値税)を減税した国は62カ国にのぼり、大企業、富裕層への課税強化の流れが起きています。バイデン米大統領も富裕層と大企業への増税、最低賃金引き上げを提起し、”大企業が利益を増やせば国民にも滴り落ちる”というトリクルダウン経済からの決別を宣言しています。

目先の利益さえ増やせば「あとは野となれ山となれ」という新自由主義が、日本でも、世界でも、貧困と格差を拡大してきました。そして、地球規模での気候危機という人類の未来にとって重大な問題をもたらしました。

新自由主義の政治から転換し、国民の命と暮らしを最優先にする政治に切り替えましょう。